2012年度第3回模試 講評

講評:岩本努先生

公立中高一貫校の試験は、当初「学力を問わない」「どんな問題が出るかどうか、わからない」「合格するかしないかは、運の要素が大きい」と言われていましたが、しかし、1999年に3校ほど開校してから、何年も入学試検が重ねられてきた現在、試検問題も徐々に私立中学の入試問題と似通った問題が増え、各都道府県ごとや学校ごとの分析が進んできました。
結果、言えることは、「きちんと準備と対策をした生徒が完全に有利」だということです。巷で言われている「地頭のいい子が有利」という部分は確かにありますが、決して知能指数テストではなく、対策のできる試検です。きちんと塾や自宅で勉強し、このような模試を受け、自分の強いところ弱いところをしっかり分析して、これからの勉強に役立ててください。今回の問題も、算国理社の問題がバランスよく配置され、資料も、しっかりその場で読みこむことを求める問題になっています。模試の受検後に、しっかりと復習と分析をしてください。

適性検査 I

  1. [問題を見る] 陸稲と水稲の違いの説明から、理科にも社会にも触れながら、問題文をを読みこんでいく形式です。勉強している生徒は、陸稲・水稲の違いや、二期作・二毛作等の言葉、縄文時代と弥生時代との違い、日本が化学肥料や農薬を使って、単位面積当たり収穫量を上げていったことは、知っているかと思います。しかし、世界の稲作まで知っている生徒は少ないと思いますので、文章をよく読んで読み漏らさないことと、きちんとその情報から、例えば日本は水資源が豊富だということまで、類推ができるとよいと思います。日本のお米は品種改良によって、北海道でも稲作ができるようになったり、近年色々な品種改良によって、おいしいお米が増えてきていること、品種改良はお米だけでなく、他の作物や、畜産物まであるということ。それによってご当地特産物が増え、地域おこしに役立っていることを、同時に知っておくよいでしょう。
  2. 今年は、ロンドンオリンピック、パラリンピックが開催され、時事として、実際の出題もあるかもしれません。今回の問題は、そのスポーツ(体育)に絡んだ問題です。ドッジボール、ラインサッカー、そして先生が子どもの頃にはなかったタグラグビーの話題です。資料を読みながら、「なぜ、そのスポーツが考えられたか?」「そのスポーツが、どのスポーツにつながっていくのか?」を考えていけば、よいかと思います。低学年の生徒が、バスケットボールやサッカーやラグビーを、いきなりやると「危ないなぁ」「難しいかもなぁ」と、考えてあげることができれば、模範解答に近づけると思います。こういう問題を解くと、学校の先生がいかに、君たちのために工夫しているのかが、よくわかりますね。普段の外遊びでも、参加者や状況に応じて、遊びのルールを変えていくとよいでしょう。
  3. [問題を見る] 普通の言葉で言うと、場合の数の問題です。これは、やっかいなことに、公立中高一貫校の問題と私立中入試問題、高校入試問題、さらには大学の入試問題と同じような問題が出題されます。場合の数は、算数・数学のセンスを問われる分野です。しかし、きちんと勉強することにより、ある程度の高いレベルには確実に到達します。今回は特に、有名な色分けの問題ですので、しっかりと勉強してきていたかが、問われる問題になっています。しっかりと復習して、類題にも挑戦して欲しい問題です。また、立体の問題部分は正答率の低くなりますが、高校で学習する化学の異性体にもつながるところです。大人の要望として、こんな問題にまで挑戦してくれる小学生がいると、大変に嬉しいと思います。是非、興味を持った生徒さんは、関連知識について調べてもらいたいと思います。もしくは、近くの先生と色々話をして色んなことを教わって欲しい。この繰り返しが「出藍の誉れ」です。「藍は青より出でて、藍より青し」と同じです。こういったことが出来る生徒を本当は、公立中高一貫校が来て欲しいと思っている生徒に違いありません。
  4. 開花条件に対する問題です。開花には、「温度」「日照時間」「その2つとは無関係(大きく成長したら)」等の条件があります。わりと有名なことですが、理科の勉強をしていないと、知らない人が多いと思います。サクラの開花条件などは、これまでに、私立中学入試の理科の問題や、国語の論説文などに出題されています。この問題は、私立中学の入試問題の勉強をしてきた生徒の方が、有利でしょう。しかし、問題の資料をしっかり読み込むことが出来れば、そのハンディを跳ね返すことができると思います。また、きちんと数値を入れて解答することが大切です。

適性検査II

適性検査Ⅱは、大きく差がつく場所です。書くのが得意な人は高得点が狙え、学校によってはこの部分が、ほとんどと言っていいほど、合否に大きく影響することになります。しかし、文を書くのが上手な人が高得点なわけではありません。問題文をしっかり読み、「何を聞かれ、何を答えればいいのか」が大切です。前回の試検でも、文章は上手でも自分の言いたいことだけ書いている答案が、多かったように思います。答案は「自由作文」では、ありません。きちんと問題に沿って答えることが大事です。「問題で聞かれていることに沿って」、「自分の意見を」、「自分の言葉で表現すること」が、高得点に繋がります。実際の作文には、減点されないことが、合格のためには必要です。例えば、原稿用紙の使い方、句読点の打ち方、誤字脱字、話し言葉で書かない、敬体と常体の統一、文字数の確保(オーバーしてはいけません)等。ただの作文とは、違うのだということの認識が必要です。意見の述べ方も、何回も書いて練習する必要があります。①最初に自分の意見を言う。②その理由を自分の具体的体験を入れて述べる。③世間一般の反対意見を述べる。④それが違う理由を述べる。⑤だから、もう一度自分の意見が正しいことを述べる。等の組立の練習が必要です。時間や文の分量によって、③と④の部分を減らす、もしくはカットすることも必要です。しっかりと何度も書いて練習してください。

この模試を受けた人が、しっかりと復習・分析をして、これからの受検勉強に活かされ、来年の春に嬉しい「合格」の知らせを受け取ることができることを祈っています。

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